看護職員需給見通し

厚生労働省では、看護職員確保の基本的な資料として、5年ごとに看護職員需給見通しを策定しています。平成22年の「第7次看護職員需給見通し」では、少子高齢化の影響などを踏まえ、労働意欲のある潜在看護師対策や就業継続・再就業のための支援体制の強化などが求められました。今後も継続して、看護職員の計画的で安定的な人材確保・質の向上を図る対策が必要となります。

看護師の需給動向

平成18年の診療報酬改定により、7対1看護体制が導入され、全国的に看護職員の不足が問題になりました。大学の看護学科新設ラッシュもあり、看護師数そのものは増え続けていますが、将来的には病院の看護師の供給過多が予想される一方で、在宅看護の領域である訪問看護師の不足が懸念されています。

少子高齢化の影響で、高齢化に伴う医療機関利用者の増加、在院日数の短縮や患者本人の希望などによる在宅療養者の増加が進み、医療・看護を必要とする人が増えています。在宅療養を送る上で重要な存在となる看護師の不足は、高齢社会の大きな課題といえるでしょう。

リアリティショック

看護学校等における教育内容と、臨床で求められる看護実践能力とに開きがあり、リアリティショックで新人看護師の1割近くが早期退職しています。現実との隔たりを埋めるためには、新人看護職員の卒後研修が効果的だといわれています。平成22年からは、看護師等の人材の確保の促進に関する法律の改正に伴い、新人の看護職員に対する研修が努力義務となりました。

看護師不足解消のために

看護師は、女性職員が多くを占める専門職です。女性は、結婚や出産・育児・介護といったライフイベントの影響を受けやすいため、仕事と家庭の両立が難しく、離職率が高くなりがちです。

看護職員の人数ばかりに目を向けて、ただ看護師を増やしても、質的不足が解決されない場合があります。ライフステージが変化しても働き続けられるような、ワークライフバランスのとれる職場環境を作っていくことが、これからの看護師不足解消のために必要となります。

5大疾病

地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として、厚生労働省が指定した「がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病」の4大疾病に、平成25年より「精神疾患」を加えた、これらの5つの疾患のことを5大疾病といいます。これらの5大疾病は、厚生労働省が重点的に対策に取り組むべき疾患として指定した疾病です

また、厚生労働省は、5大疾病に加え、「救急医療」「災害時における医療」「僻地医療」「周産期医療」「小児救急医療を含む小児医療」をあわせて5大疾病5事業とし、医療連携体制を構築するとして、医療計画に明記しています。

なぜ精神疾患が加わったのか

もともと厚生労働省から指定されていた4 大疾病に関しては、患者数がここ約10年の間ほぼ横ばいであるのに対し、後に加えられた精神疾患については、患者の数が約1.5倍に増加しているといわれています。その中でも特にうつ病の増加は著しく、職場が原因のうつ病の他、月経前症候群や更年期障害・妊娠・出産・育児に関連したうつ状態など、女性患者も目立つのが特徴です。

また、我が国で自殺する人の多くが精神疾患を患っていた可能性があると考え、自殺者の数が年間3万人を超えることからも、厚生労働省は精神疾患に対する対策を強化する必要があると判断したとみられます。

うつ病による影響

精神疾患の中でも増加が目立つうつ病については、本人や家族が大変なだけではなく、社会的にも損失が大きいといえます。例えば、職場でうつ病になる社員がいた場合、意欲や集中力の低下などにより、仕事がはかどらなくなることが考えられます。その影響により、他の社員の負担が増えることで、その人たちも心身の疲労が蓄積し、場合によっては新たなうつ病患者を生み出すことになりかねません。うつ病の発症により、職場全体の効率が悪くなるため、生産性は下がります。

近年、社員のメンタルヘルス対策に苦慮している企業が多くなっています。平成27年には、常時使用する労働者に対するストレスチェックが義務付けられ、これは精神疾患への対応の重要性が形となってあらわれたものといえます。

看護師の職業病

職業病とは、仕事における業務内容や労働条件・環境などが原因となって起こる健康障害のことをいいます。労働基準法においては、業務上疾病と呼ばれます。

職業病にはどのようなものがあるのか

職業病は以前、有害物質などの危険物を扱う職業の人や、環境が劣悪な中で働いている人たちに見られる、特殊なものだと考えられていました。例えば、鉛中毒やじん肺・騒音性難聴・有機溶剤中毒などが挙げられます。これらは、扱う物質の持つ性質や物理的環境が左右する職業病です。

しかし、もともと職業病とは関係ないとされていた職業の人たちにも、だんだんと健康障害が広がっていきました。職業病は、有害物質や劣悪な環境だけではなく、業務そのものが影響するケースがあるのです。例えば、長時間に及ぶパソコンによる作業では、頸肩腕症候群やVDT障害など、新しい健康障害が問題となっています。

看護師の職業病

看護師に起こりやすい職業病には、一体どのようなものがあるのでしょうか。

一般に看護師は、立ち仕事の多い職業です。また、三交代制などで夜勤があったり、急変する患者がいれば仮眠も取れず、なかなか帰宅することができなかったりするなど、過酷な労働環境にあるといえます。このような状況の中で看護師は、慢性的に腰痛を抱えたり、過労による不調を訴えたりする人が多くなっています。

腰痛は、単に重量物を取り扱ったり、腰部や下肢への負担の大きい作業を行ったりすることだけが発生要因ではありません。過重労働や疲労・心理的ストレスなども、腰痛症を引き起こす要因であるとされています。

職業病の予防や悪化防止のために

鉛や有機溶剤を取り扱うなど、特殊な環境下で働く人に対しては、事業者は特殊健康診断を実施しなければならないことになっています。また、VDT作業や振動を伴う作業などに従事する人に対しては、行政指導により事業者による特殊健康診断の実施が奨励されています。

看護師などに起こりやすいとされる腰痛症についても、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づく健康診断として、6か月以内ごとに1回、腰痛についての健診が行われることになっています。
事業者には、労働者の健康を管理しなければならない義務があります。これらの健診をうまく利用し、何らかの異変に気がついたら、早めの受診を心がけましょう。

医療格差

医療格差とは、人々が医療サービスを受ける際に起こる様々な格差のことをいいます。このような格差は、地方と都市部との医療の充実度の差や、特定の科目での医師不足などにより、満足な医療サービスを受けることができないといったケースが生じていることなどが例に挙げられます。

地域間における医療格差

都市部と地方を比較した場合、地方では特に医師不足が深刻で、医療満足度が低くなる傾向にあります。研修医が自由に研修先を選べるようになった今、研修先として都市部の病院に研修医が集中するようになりました。また研修後も地方へ戻ろうとしない医師が多いために、都市部と地方との医療格差が生じています。

この問題を解決するために、地方の病院を研修先として選んでもらえるよう支援体制を整えたり、地方自治体による奨学金制度を実施したりするなど、様々な対策が行われています。また、医師登録制度が作られ、地方に興味を持っている医師と、医師を求めている医療機関とのマッチングを行っています。しかし、これらの対策に即効性はなく、まだまだ地方の医師不足問題は深刻です。

診療科目による医師の偏在

小児科や産科など、特定の診療科における医師不足問題も深刻です。産科では、出産を考えて24時間体制がとられますが、子育て中の女性医師には当直勤務が困難であり、育児中の女性医師を当直から外すと、周りの医師への負担が大きくなるという状況が発生します。また、出産に関連した訴訟リスクの高さなどが医師の精神的な負担となることも、産科の医師を減少させる一因となっています。

医療格差をなくすために

医療格差をなくすためには、医師が働きやすい環境を整えることも大切です。過重労働により、医師の精神的・肉体的負担が増大すると、退職を考える者が増え、さらなる医師不足に陥ります。育児中の女性医師が復職したり、勤務を継続したりできる環境を整えることも、医師不足解消につながり、医療格差を軽減することにつながるでしょう。

また、テレビ電話や衛星回線等を利用した遠隔医療の利用も、医療格差を埋めることに役立ちます。遠隔医療は患者と直接会って診察を行わないため、診療行為ではないと考えられてきました。しかし、平成9年の厚生省の通知により、遠隔医療が正当な医療行為として認められることになりました。専門医のいない地域においても高度医療を受けることができ、患者が遠くの病院まで通わなくてもいいなど、様々なメリットが考えられます。これからの新しい医療の形として、遠隔医療への期待も高まっています。

潜在看護師

看護師資格を持っているにも関わらず、妊娠や出産・育児・介護など、何かしらの理由で離職し、現在看護師として働いていない人のことを潜在看護師といいます。看護師不足といわれる医療業界において、潜在看護師の臨床復帰への期待は高まっています。

看護師不足問題

高齢化が進む日本では、医療を必要とする人が増えており、それに伴い看護師不足が問題になっています。現在働いている看護師の離職を食い止め、育児や介護などで離職している潜在看護師の復帰を促進することが、看護師不足問題の解決には必要です。
しかし、看護師の離職理由は、出産や育児・介護等のライフスタイルの変化に伴うものだけではありません。職場の人間関係による精神的ストレス、残業の多さ、休みのとりにくさなども理由に挙げられるため、復帰促進は容易に進むものではないといえます。

新人看護師の離職理由

新人看護師の離職理由は、看護学校や看護大学で学んできた内容および卒業時の能力と、実際の医療現場で求められる実践力とのギャップによるものが大きいといわれています。初めての職場で初めての仕事をし、しかもそれは人の命に関わる仕事です。事故を起こすのではないかとの不安や、専門的な内容についていけない、看護師に向いていないのかもしれないなどの悩みが生じ、1年未満の早期に退職するケースが多く見られます。

復帰への不安

育児や介護が理由で離職した看護師の場合、子育てが一段落着いたら復帰しよう、介護の問題が解決したら復帰したい、と考えている人もいるでしょう。しかし、いざ職場復帰となると、様々な不安から復帰に踏み切れない人もいるようです。ブランクを経て復帰に向かうとなると、新しい医療機器に対応できるかどうか、身に付けたはずの知識や技術が思い出せるか等、心配は尽きません。

最近では、そのような不安を抱えた潜在看護師に対し、病院等の主催で、復職支援セミナーが行われることも増えてきました。看護の基礎となるバイタルサインや採血・注射・シリンジポンプの取り扱い・吸引等の技術面や、感染予防や心電図の解読などの知識面など、多岐に渡る内容が取り扱われます。セミナーによっては、実際の医療現場の見学ができる場合もあります。復帰前に研修を受けておくことで、働いていた当時の感覚を思い起こすきっかけとなり、また自信を取り戻すことができるため、スムーズに復帰へとつながることでしょう。

仕事が辛くて現場から離脱してしまう看護師も、いざとなったときには資格を生かして看護師に復帰できるよう、看護師転職サイトに登録しておくのが鉄板と言われています。